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ぼったくりの帝王 影野臣直

プロフィール


影野臣直
1959年、大阪府出身。
大学入学のため上京。
歌舞伎町に出てキャッチバーでバイトを始め、以後ボッタクリ一筋20年。
男女キャッチ併せ100有余名の、歌舞伎町最大ボッタクリチェーン「Kグループ」を築き上げる。1999年、「梅酒一杯15万円事件」で逮捕。
懲役4年6ヶ月の実刑判決を受け、新潟刑務所に服役。
2000年11月、『ぼったくり防止条例』施行により、グループ解散。
2002年 仮出所。
以後、裏社会の幅広い人脈を生かし、歌舞伎町ネゴシエーターとして活躍。
現在は作家に転身。

[著書一覧]
『実録ボッタクリ商売』(シーズ情報出版)
『歌舞伎町ネゴシエーター』(河出書房新社)
『刑務所(ムショ)で泣くヤツ、笑うヤツ』(河出書房新社)
『プリズン・ダイエット』(環健出版社)‥2007年12月中旬発売予定
他多数

獄同塾友会
107-0052 東京都港区赤坂7-7-2 ヴァーチャス赤坂77 201号室
FAX 03-6441-2869
Mail gokudojyuku@gmail.com

ぼったくりの帝王


―【歌舞伎町ネゴシエーター】拝読させて頂いたんですが、あれは自伝ですか?
影野:そうですね。自分の子供の頃の事も書いてますし。

―ちょっと架空なのかと思ったんですけど。
影野:いや。みんなノンフィクションですよ。
【歌舞伎町ぼったくり懺悔録】では、それをもっと、懺悔してなくて(笑)楽しそうに書いてますよ。

―そうですか。楽しみだなぁ。そちらも是非読ませて頂きます。【歌舞伎町ネゴシエーター】リアルだから、おもしろいんですね。
影野:最初は、大学が決まって東京来たんですよ。
でも、ぼったくりのバーで働き出して大学辞めちゃった。
キャバレーかなんかでアルバイトしようと思ったら、ぼったくりの店長に騙されて。
高級マンションだなんて言われて、住み込みでザコ部屋の押入れで寝てました。(笑)

―まわりの人間ってみんな少年ヤクザとか暴走族あがりばっかりでしょうし。大学生でぼったくりバーやってると怖くなかったですか?
影野:俺はいきがってたけど、子供の頃から勉強できたし。
夜は悪い友達と一緒になって遊んでたけど、学校もちゃんと行ってた。

でも、浪人中に大阪のキャバレーで働いてたから。
大阪のヤクザは怖かったからね。そこで一年ずっとアルバイトしてたから(笑)

―それで免疫出来てたんでしょうね。
影野:それと、怖い物知らずだったんですね。
20代の前半からいきがってましたから、拉致られたことも何回もあるし、袋叩きにあって死にかけたこともあるし。
昔から物怖じしない性格で、普通にヤクザ者と一緒に飲み行ったりしてましたからね。
歌舞伎町も、一度も怖いと思ったこと無い。良い街だなと思ってましたから。

頑張ったら頑張っただけ金になるなと。
大学在学中に、部長職で45万の補償金もらって、さらに歩合がついたんですよ。
女集めるのもうまかったから、集めて表に立たせたり。看板どこに置くか、からいろんなシステムを自分で考えて。
千円でも二千円でも取ってやろうと思ってやってました。

梅酒一杯15万円事件


―まさに天職ですね。そこからは、もうぼったくり一筋やって。最終的に刑務所に長く入られて。
影野:そうですね。4年半。3年9か月かな。仮釈放1年もらいましたから。

―これって長いですよね。どうしてこんなに長くなるんですか?
強盗なんです。強盗、恐喝、風営法違反。恐喝2件と強盗1件で求刑8年でした。
5億2千8百万、俺んとこに入ってきたっていうことで。

―それ、全部めくれたんですか?なんでそんなに解っちゃうもんなんですかね?
影野:逮捕者がすごかったですからね。
8人逮捕されて、5人刑務所に行きましたから。

―大事件じゃないですか。
影野:当時、グループ全員で男40人。もうちょっといたかな。
池袋と上野でもグループやってたから、そいつらも併せたら60人くらい。
それでガールキャッチと店の子達で、女が40人くらい。
だから100人くらいいましたから。

―めちゃくちゃ儲かってたんですね。
影野:ぼったくり時代は月1000万くらい飲んでたんですよね。
歌舞伎町で稼いだものは歌舞伎町で還元するという。(笑)
月収は、あの当時2000万くらいあったんで、いつもみんな連れて高級クラブ飲み歩いてたんです。

―2000年。影野さんが刑務所にいる間に、グループは解散したんですか?
影野:そうですね。2000年にぼったくり防止条例ができたんです。
このぼったくり防止条例作ったのが、俺だって言われてるんですよ。

―そうですよね。翌年ですもんね。(笑)
影野:ぼったくりを、毎回強盗で捕まえてたら面倒だったんでしょうね。
今は条例で捕まるものも、当時は刑事罰で。
いわゆる強力犯で、捜査一課と生安の合同捜査。
でも挙げてみたら、本当は強盗じゃないと。

―今は条例ができて、ぼったくりでパクられた場合はどうなるんですか?
影野:罰金200万くらいでしょ。懲役一年以下か。罰金100万か200万。

―じゃ、法整備される前に捕まっちゃって、大分損しちゃいましたね。
影野: 俺たちは、金払わない客を警察に連れて行こうとしたんですよ。
被害者は、変なロン毛の宅八郎みたいな感じの奴で。風俗雑誌をリュックに何冊も持っている風俗オタクなんです。
「お前ばかだな。このことお父さんに言うぞ。(金払わないで)こんなに何時間もかかるなら、警察いくぞ。」って言ってたら、「勘弁してくださいー。」って払った。っていうのが事実なんです。
だって、一回店出た後にまた戻ってきてるんです。
「あ、忘れものしました。」って。
普通、被害者が一回強盗にあった現場に戻るようなことはしないんですよ。強盗ってのはそれくらい畏怖するわけですよ。

それを、ハサミをクビに突きつけられたとか、ボコボコに殴られたとか。信じた警察も警察だけど。

―おまわりも空気入れてるのかもしんないですよね。
影野:いやぁ。でもそんな感じじゃなかったな。
「岩手の訛りのすごい人が、歌舞伎町来て騙された。これは許せん。」みたいな。雰囲気があったんでしょ。
「馬鹿か。」って感じですよね。

でも、結果的にそれで作家になったんだから。それもまた人生の転機だったから。

―そしてこんなに立派な団体(獄同塾友会)の代表もやられてますもんね。
影野:立派にやれてるかどうかは、まだ解りませんけどね。
原稿もなかなか集まらないんですよ。みんな締切りを守ってくれないし。(笑)

獄同塾友会


―塾長をやられてるんですよね?
影野:編集長ですね。

―キャッツアイ事件のKさん。民間人を巻き添えにしてしまった射殺事件で23年入られてる。
影野:そうです。最初に8年間係争して15年という判決。それで23年なんですよ。
“西成の顔(つら)”っていう、これも俺が原作して白竜さん主演のものなんですけど、これがその事件をモデルにした話しですよ。
そのKさんを支援する女性の方がいらして、その方が極道塾通信というやつを始めたんですよ。
それがすごく有名になって、100部から始まったものが、一時2000部近く出ていたんです。

―その女性の方はどういう方なんですか?
影野:死刑廃止論者。冤罪被害者を支援する。そういう人ですよ。

―いわゆる、暴力団の使用者責任の罪を問うというものの、最初の事件ですよね。
影野:暴力団員を狙って売った弾が、その場にいた一般人の女の子にあたって死んじゃった。

Kさんはやった人間を破門にしてますから。
それでも仕方ないから、それ以上行ったら親分まで捕まるからっていうので、全部自分が背負った。
慰謝料4000万も被害者に払ってるんですよ。「わしはやってないし、やらせてもいないけど。」って言って。

それからファンがものすごく増えて。極道塾通信が、ずーっと伸びたんです。

―すごい歴史のある本なんですね。
影野:だけど。やっぱり資金が大変なんですよね。
原稿集めるのも大変だし。受刑者からものすごい数の手紙が来ますし、対応も大変で創設者の女性の方は辞めちゃったんですよね。

―一度終わってるんですか?
影野:そうですね。
それからKさんが出所してきて、極道塾友会という名前に変えて9冊出したんですよ。
それをその後リニューアルして、私がやってるんです。

―当初女性の方が始めた時は、単純にKさんの冤罪を晴らすという団体だったんですか?
影野:そうですね。Kさんも書いてたし、アメリカの刑務所に服役中の方も原稿を出してたし、受刑者が書いてるのが多かったんです。
今は、我々とか、刑務所に行ったことのある人間とか、アウトロー系のライター達が。ま、みんなのために書いてやろうと。

―以前のものに比べると、大分垢抜けましたね。
影野:むかしのものは全然印刷のレベルが違います。
私が関わってからは、マッドマックスの編集部員とかに手伝わせて作ったものなんで、かなり良い線行ってますよ。デザインも自分が一生懸命して。(笑)

―獄同塾友会の活動というのは、これを刑務所に送ることなんですか?
影野:こうやって「送ってもらえないでしょうか?」と受刑者から手紙が来るんですよ。
送ってくださいっていうのには全部送ってるんで。
これは今年になってから来たやつですよ。


―どこで存在を知るんですかね。
影野:口コミでしょうね。持ってる人間は自慢しますから。


―なんでこれ消してあるんですか?(受刑者から送られてきた手紙を見せて頂いて。)
影野:検閲ですね。


―これなんか達筆ですね。
影野:みんな字はうまいですよ。


―マンガも載ってるんですねぇ。“ブラックジャックによろしく”版権フリーですよね。
影野:そうですね。こういうの使う方がまともそうな、真面目そうな。本に見えるでしょ。

―読む人も楽しいし、素晴らしいアイディアですね。娯楽を与えたいっていうことですか?
影野:それもありますね。
自分としては、頼まれてやってるのもあるけど。
受刑者のこととか、なんとかしてやりたいなと思って。
自分もそういう目にあってたんで、なんとかしてあげたいなという気持ちが強くなってですね。

―広告と寄付でなりたってるんですね。
影野:そうです。出すのに50万くらいかかるんですよ。
協賛者を募集してるんです。今はグリーンツダジム、マッドマックス。人材募集してる土建屋さんとかがいます。

―人材募集って、刑務所出てきてすぐの人雇ってくれるんですか?
影野:そうです。部屋を用意してくれるのが条件ですから。
「前科前歴問いません。」というね。良い人ですよ。

―ムショ長い人なんて情報ないから助かりますよね。
出所者が出た後の就職先なり、住む所なりの広告が入れば、運営費にもなるし、読んだ人も助かるし。素晴らしいシステムだと思います。

影野:そういう協賛してくれる人がいると、運営していくためにも助かります。
現在、切り詰めて、書き手はみんな無償でやってくれてますから。

―社会復帰を支援するって書いてありますけど。
そうですね。やっぱり、もう二度とやんないでくれよ。という気持ちもありますから。
寂しいじゃないですか。また行ったとなると。

―立派な活動ですね。
影野:中で(受刑者に)読ませてもらえれば本当に素晴らしいものなんですけど、なかなか入れてもらえない。
創刊当時は何でも入ったんですけど、今は刑務所が「入れられません。」って返してくるんです。

―何が悪いのか、そこを研究しながらやらなきゃいけないんですね。
影野:それは所長権限ですよね。
このタイトルが悪いって言われちゃったりもしますからね。
「ひまわりさん」とか「たんぽぽさん」そういう名前にしたほうが良いかもしれないです。
でも、それじゃせっかく先人、先輩達がね。
極道塾通信からずっと名前が通ってきてるんだから、それを俺の一存で名前を変えるっていうのも、失礼なことだなと思ってね。
そこは変えないでやっていこうと思ってますけどね。

獄同塾友会にご興味のある方は、手紙かFAX、E-mailでお気軽にご連絡ください。
運営のために、寄付、協賛、広告も募集させて頂いています。

獄同塾友会
107-0052 東京都港区赤坂7-7-2 ヴァーチャス赤坂77 201号室
FAX 03-6441-2869
Mail gokudojyuku@gmail.com

死刑考


―獄同塾友会では、今は特定の支援してる方は?
影野:特にいないです。林真須美とも仲良かったんですけど、確定したんです。
7回面会行ったのかな。

―死刑になったんでしたっけ?
影野:いや、まだなってないですよ。今無罪になるんじゃないかと言われてるんです。
医学部でヒ素の成分が違うとかどうとかで。

判決は21年に確定しましたけどね。
今は、もう、明日執行されてもおかしくないんです。

―それも怖い状態ですね。
影野:みんな精神おかしくなっちゃうんですよ。
袴田事件のあの人もそうですけど、失語症っていって、言葉失っちゃって。
ずーっと3畳の間にいて、運動の時間は鳥小屋で。それが何十年も続いてたら人間おかしくなりますよ。

―死刑囚は独房なんですか?
影野:独居ですよね。他の人と触れ合わせないですから。
運動の時間、5、6人でワイワイしてたら、ストレスも発散できる。
ずーっと一人だと、諦めの境地に来ちゃうんですね。「もうこんな人生終わっていいや。」と思わせて、初めて死刑執行なんです。

―それは、辛いですね。
影野:でも、殺された人はもっと可哀そうでしょ。
ま、もうちょっとなにかやり方あるんじゃないかな?とは思いますけどね。
韓国の刑務所なんかは、仕事しながら、ある日死刑執行される。

―人間らしい生活を送らせるってことですね。
影野:でも、もし自分の息子が殺されたら、自分の母親が殺されたら、俺そいつ殺したいですもん。みんな同じだと思いますよ。
もう、いくら泣いても叫んでも帰ってこないんですから。
だから、それなりに罪を受けなくちゃいけない。

でも、自分に関わって無かったらだけど。こういう仕事してると、「死刑囚はかわいそうだな。」と思いますよ。

―なるほど。さすが、深いお考えをお持ちです。
林真須美さんも。

影野:いや。真須美ちゃんは、あれは元気ですね。(笑)
「キティちゃんのパンツ入れてや。」とか言いますからね。
キティちゃん好きなんですよ。送ってやりましたけど。

―林真須美は、実際はやってるんですか?
影野:俺は、やってないと思うんですよね。
現場も何回も行って、息子にも会ってますから。
俺、その件について、一回ナックルズで書いてるんですよ。
他に捜査線上に浮かんでいる人間もあるんですね。詳しいところはオフレコなんですけど。

作家として


―現在の活動のメインは作家ってことなんですかね?
影野:そうです。作家です。
小説も書いてますが、Vシネだけでも11本くらい原作やってますよ。
最初のVシネマってのは、自分の原作で“実録・ぼったくり 風営法全史”っていうのを撮ったんですよ。
それで結構人気が出て。
この前の12月24日にもVシネマの撮影終わって。白竜さんと。自分が白竜さん射殺する役ですよ。

―俳優もやられてるんですか?
影野:むかしのGPミュージアムが、「あんたキャラ立ってるからやってみなさいよ。」と、無理矢理やらされたようなのがきっかけ。
結局、全部で20本くらい出てますよ。

―今後はどういう方向に?
影野:やっぱり物書いていきたいし、連載もしたいですよね。

―ぼったくりとか詐欺とかやって、どーんと儲けるようなのは?
影野:いやいや、ここまできた以上。自分ではですけど、そこそこ文章も書けるなぁというのが解ってきて。
それに、親も安心しますからね。

―お母様?意外なお答えですね。
影野:母親も、もう老人だから。79歳ですからね。あんまり心配かけるようなことは。(笑)

取材後記


マッドマックスの特集記事や、マンガで読んだことがあった影野さんとは、某飲み会で偶然お会いすることができたのが、きっかけだった。
まさに、アンダーグラウンド界の作家代表。みたいな人である。
ここ最近、WARUMONでそういう仕事をさせてもらっている自分にとっては恐れ多い大先輩なのだが、インタビューをさせて頂いた後も、事あるごとに色々と相談にのってくれたり、飲んでいる席に呼んで下さったり。
顔と知識が広いのはもちろんの事、本当に面倒見が良くて、やさしい人なのだ。
ご自身のプロフィールには、【裏社会コーディネーターとして、「表社会と裏社会の融合」を目指す。】とあるが、こういう物事の筋や善意を持っていて論理的な人が、そういう活動をしているというのには、敬服するばかりである。

Interviewer Profile
彫昌(ほりしょう)
東京都豊島区池袋で彫師として活動中。
WARUMONの編集長として、数多くの著名人にインタビューを行っている。
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