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WARUMONインタビュー 小説家 中村うさぎ 2

ホスト


―僕も刺青屋15年やってまして、ホストのお客さん多いんですよね。風俗嬢の人もいっぱい来ますし。
うさぎ:ほー。そうですか。

―旦那さんを含め。ゲイの方と遊んでいたうさぎさんが、1回、歌舞伎町にぶらっと行っちゃったら。当時27歳の超美形の春樹君にハマっちゃったんですね。
うさぎ:はい。
二丁目で何年か遊んでるうちに、人間関係とか固まってきちゃうじゃないですか。行く店も決まっちゃうし。それで退屈になってきちゃって、「じゃ、ちょっと足伸ばして歌舞伎町行こうか。」って女友達と歌舞伎町に行ったのが、運のつきで、ホストにはまっちゃうんですね。

―「私という病」で見ると、42歳くらいですよね?
うさぎ:それくらいかな。

―始めはタニマチっていう立場で。
うさぎ:そうですね。

―それが急にイロコイ(色恋営業)になるっていう。あのシーンおもしろいですよね!!すごい笑っちゃったんですけど。 ※中村うさぎ著 【私という病】
うさぎ:そうそう。「お金がいよいよ無くなった。」って言ったら、いきなりイロコイかけてくるっていう。

―あんなの、ホストが型にはめるいつものパターンっていう感じしますけど。
うさぎ:そうなんですか?

―うさぎさんもうっすら解っていたんですよね?
うさぎ:私は、あんまり。そういう世界にうとかったんで。

―そっか。うさぎさん、OLから作家で、二丁目。だから。
うさぎ:そう。ホストは全く解らなかったから、当時は手口だとは思わなかったですね。

―「付き合ったんなら、明日から、あたしお店行かなくて良いのね?」ってなりません?「付き合ってね。お店にも来てね。」じゃ、あきらかに矛盾していますよね?
うさぎ:うん。でもなんかこう、良いとこ見せたいみたいな、虚栄心というか。喜ばせたいとかね。

―それはタニマチの時だからじゃなくて?
うさぎ:それがイロコイになると、ますます貢ぎたくなるというか。
だから、そこらへんは、あんまり矛盾とか思って…。
あ、でも「騙されてんだろうな。」って薄々は思ってたんだけど、思いたくなかったのかもしれないですね。

―おっさんがキャバクラ嬢に騙されているのより、女性がホストに騙されている方が、深いというか、重いですよね?
うさぎ:男はやっちゃえば、気が済んで、もう店に行かなくなっちゃったりするんですけど、ホストは早い段階から枕(営業)使うんで。肉体関係が出来た方が、女子ははまっちゃうっていう事なんじゃないですかね。

―ここまで聞いて、不思議なんですけど。
うさぎさん、整形されていますけど、元々綺麗な方だと思います。それで頭も良いし、浪費家だけど(笑)、その分おしゃれだし。
それなのに、なんか、わざわざ二丁目に行って、わざわざホストクラブに行って、「彼氏が欲しいとか、その子が好きだ。」とか言っているじゃないですか。
「だったら、もっと普通の場所行って、普通の彼氏作りゃ良いんじゃないの?」って思いますが。

うさぎ:普通の彼氏っていうのは、この人と結婚する前に、最後の彼氏がいたんですけど、不倫だったんですよね。
不倫って結構ストレスがたまるんですよ。やっぱり自分が一番じゃないとか、大事にされてないとか。なんか常に心の中に澱みたいなものが溜まっていく感じがあって。
それで、ある時、本当に嫌になっちゃって別れた時に「もう男の人は良いや。」ってなっちゃって。
それで、ホモと女としか遊ばない。男と一切恋愛関係も無いし、セックスも無い。っていう、「鉄の処女期」って呼ばれた頃が8年間くらいありましたね。

―なるほど。で、8年物の「鉄の処女」が、いきなりホストに封印していたものを開けられるように?
うさぎ:(笑)そうなんでしょうね。
その8年間は男なんていらないって、本気で思ってたんですよ。べつに無理矢理じゃなくて、「もう、うんざりだ。」って思っていたから。
だけどやっぱり、楽しく遊んでても、40歳も過ぎて。女としての賞味期限も切れていくわけじゃないですか。女はやっぱり40歳超えると商品価値が暴落するから。
そういう焦りみたいなものもだんだん知らないうちに積もって来たところに、“ホスト”みたいな。

―じゃ、ホストクラブに行っちゃいけないタイプの女性だったかもしれないですね。その3、4年前に行っていたら、適当にあしらって終わったかもしれないですけど。
うさぎ:そうですね。行っちゃいけないタイプでしたね。

―他にハマったホストとかっていないんですか?
うさぎ:はまらないですね。一人だけですね。
そんなにはまっちゃってたからね。「あたしってホストクラブ好きなのかな。」と思ってて。
好きなことは仕事にするのが趣味なので、一時期女性セブンで、「毎週、北海道から沖縄までいろんなホストクラブに行く」っていう仕事を漫画家の倉田 真由美さんと組んでやってました。
でも、どこ行ってもつまんないんですよ。
だから「あぁ、私ホストクラブが好きなんじゃなくて、春樹が好きなんだなぁ。」って思いました。

―春樹さんには結構お金落としちゃったんですか?
うさぎ:結構落としましたね。

完全に破局した原因が、正月のトーク番組で、おすぎがいきなり、「あんたさぁ、ホストにハマってる。みたいな話しを聞くけどさ。大体、いくら使って何回セックスしたの?」って聞いてきたんです。
それで、「1500万円くらい使ってて、3回しかセックスしてもらえてないんで、一回500万のチンコですね。ハハハ。」とか言って笑ってたけど。正月番組だし昼間の番組だから、絶対カットされるだろうと思ってたら、それがそのまま放送されちゃって。
ホストが家に怒鳴り込んでくるっていう事件が、正月早々ありました。(笑)

―怒鳴り込んできた理由っていうのは?
うさぎ:発言がテレビで放送された瞬間に、他の客から春樹にすごい勢いで電話がかかってきたらしいんですよ。
他の客たちには、みんな本カノ扱いしてるわけだから。「中村とやってんだろ?」とか聞かれても、「やってねーよ。あんな婆さん。ただのスポンサーだ。」って言ってたんだろうからね。

―ま、良くある。「ホストと客の終わり」ってそんなもんですよね。キャバクラの女とかヘルスの女が他で、アタシ〇○とやったのよ。って言って、「てめぇ俺とやったとか言ってんじゃねぇよ。」ってね。
うさぎ:なるほどね。そんなもんですよね。

整形


うさぎ:そんなこんなで、ホストからはすっかり足洗ったんですけど、対談の仕事で、美容整形外科医の高梨クリニックの高梨院長と対談する機会があって、対談したら、すごい面白い人だったんで盛り上がっちゃって。
「じゃ、今度整形してみない?」とか言われて、「やるやる。」とか言って、
ただしたっておもしろくないから、その企画を女性セブンっていう週刊誌でやったら、結構話題になって。それ以来すっかり整形が楽しくなっちゃった。

―2003年には、豊胸してグラビア披露までしてますもんね。
うさぎ:そうそう。女性誌にしか出す気は無かった。おっぱいとか。
男性誌でグラビアっていうのは、男性の性的対象っていうことじゃないですか。わたしは女の人に、見せたかった。こういうこともあるんだよ。って。

―できんだよ。やりたい人はどうぞ。って?日本では整形に対して否定的な意見を持っている人の方が多いと思うんですけど。うさぎさんは、「したい人は整形しちゃったほうが良いよ。」って思います?
うさぎ:ま、それは本人が決めることだからね。
それに医者の腕もあるし、失敗しちゃったら、取り返しがつかないっていうリスクもあるんで。
だから、誰にも彼にも進めるってわけじゃないけど。
例えば、自分の容貌のことでね、自己評価がどうしても低くて、辛い思いしてるくらいだったら、ちょっと直しくらいした方が、人生は生きやすくなるんじゃないの?くらいのことは思いますね。

―親にもらった体を。とか日本で良くいいますけど。
うさぎ:“親からもらった体”とか言ったらね。じゃ、ピアスも開けちゃいけないのか?とか、歯列矯正だってね。歯だって親の遺伝ですからね。
整形って、“お金使って、美人になる”っていうのが、ずるいという気持ちになっちゃう。でもずるいって言ったら、なんか嫉妬してるみたいに思われるから、「親からもらった体を。」とか色々正当化してるんだと思う。

―ヤキモチってことですか?
うさぎ:ヤキモチっていうか、不愉快なんだろうと思うんだよね。金っていうのが嫌なんだと思うんですよ。「じゃ、金持ちは整形しまくって、良い思いばかりして、お金が無い子はずっとブスのまんまかよ。」みたいな。
嫉妬があるとしたら、そういう嫉妬でしょうね。

デリヘル


うさぎ:せっかく整形したし、「自分にいくらくらいの値がつくのか試してみたいなぁ。」と思って、デリヘルやろうということになりました。

―ホストにセックスを「やってあげる」なんてやられて傷ついて。今度は男の方がお金払ってきたものに対して「私がやらせてあげたのよ。」っていう。
ある意味自分に対する治療みたいな意味合いもあったんですかね?

うさぎ:それはあったでしょうね。

―この本もヌキネタで買った男性はごめんなさい。って冒頭に書いてありますけど。
うさぎ:そうなんですよ。デリヘルやったって聞いて、すごいエロイ内容を期待する男性読者からの反応が結構あったんで。
別にそんな、「どんな風にチンコ舐めた。」みたいな話しは、最初の方しかないんで、男の人はつまんないだろうな。と思って、最初に言っておいてあげないと、金損したとか思われるの嫌だから。(笑)

―ずりネタみたいな本書きたくないとか、そういう目で見るな。っていう意味ではないんですね。
それは無いです。

女の人に読んでもらいたいなとも思ってたし。
―風俗やってる女の人ですか?
うさぎ:風俗やってなくても。
女として生まれて、女であることに自信があっても、やっぱり年齢とともに賞味期限は切れていくわけだし。自信がなかったらなかったで、ずっとコンプレックスを抱えてね。
そういうことで、なんか生きにくいっていうかな。そういう人達に向かって、「あたしはこうだった。」っていう話しをしたかった。

―どうでしたか?デリヘルやってみて。フェラチオ嫌いだって書いてありましたもんね。
うさぎ:うん。嫌いなんです。だから嫌でしたよ。

でもまぁね。最初の頃は、「こんな私なんかを買ってくれてありがとう。」とか思ってるんだけど、そんな殊勝なことを思っているのは最初だけで、もう二回目くらいからは、「ご指名です。」みたいに言われたら、「えー。面倒くせぇ。」みたいな。自分の擦れっ枯らしぶりに驚きましたけど。

あと、体力使うんですよ。普段が座りっぱなしでパソコンで原稿書いてる仕事じゃないですか。
でもデリヘルってね。チンコしゃぶったりとか、いろいろ自分が動き回ってサービスするわけだから、もうへとへとになっちゃって。
いやー、こんなに肉体労働だったんだ。と思って。「今まで彼氏とセックスをしてた時、こんなに疲れなかったなぁ。お金貰うっていうのはこういう事なんだな。」と思ったりもしました。

―3日しか行っていないけど、15人も相手にしたんですもんね。
うさぎ:そうですね。

―性的な抵抗感は無かったですか?「知らないおっさんのちんぽ舐めるのが、精神的につらい。」みたいな。
うさぎ:それは、もう割り切るしかないなと最初から思ってたんで。
嫌ですけどね。生理的嫌悪っていうか。こんなジジイ、もしこの仕事じゃなかったら、向こうが金払うって言っても、絶対やんないだろうなっていう人もいましたよ。
でも金貰ってるから、こっちに拒否権は無いんだから。

店長にもね。「お客さんは、セックスだけじゃなくて、恋人気分を味わいたいわけだから。そういう雰囲気を作ってあげるんだよ。」みたいなことを研修で言われたんで。好きなふりはしませんけど、ツンツンはしないっていうか。
当たり前だけど、そうするとおっさんが喜んだりして。「ああ、こういう仕事なんだな。セックスだけじゃないんだな。」
あたしがホストにハマった時に、すごく寂しかったのと一緒で、この人達もセックスするためだけの理由で来てるんじゃなくて、ちょっと寂しいところがあって来てるんだなぁ。と考えたりもしましたね。

―終わった後に添い寝しているシーンとかありましたもんね。
うさぎ:そうそうそうそう。

―相手が若い男の子だったりもするじゃないですか。そういう時って、「私もちょっと興奮してきちゃった。」「やりたくなってきちゃった。」みたいなのは?
うさぎ:それは無いですね。もともとHあんまり好きじゃないですね。

―うさぎさんは、朝から晩まで飲んだくれてて、もうセックス大好き。っていうイメージありますけど。そんなことはない?(笑)
うさぎ:そうでもないですね。セックス大好きになりたいんじゃないかな。現実的には、そんなに大して好きでもないのかもしれないし。

近況


うさぎ:で、そっから先は時に変わったことはしてないですね。(笑)

―最近のうさぎさんっていうと、東京MXの番組とか出て「毒舌キャラ」とか、「からみキャラ」とか言われていますけど、実際も?
うさぎ:毒舌ですね。キャラは素のキャラで、普段友達といるときもズケズケ言いますね。
オカマコミュニケーションていうかね。新宿二丁目で長いし、ゲイの友達ばっかりだから。お互いに「おはよう。ブス。」とか言ったりするし。
相手に対して毒舌で、丁々発止やり合うみたいなのを楽しむゲイは多いです。
そういう人達と遊んでると、麻痺しちゃって、「どっちが辛辣なことを言うか。」みたいなね。(笑)
でも、それは嫌いで言ってるんじゃないのがお互いに解ってるから。それも一つのコミュニケーションというか。

ま、ずけずけ言い合える人じゃないと、あんまり友達になれないですね。本音を言わない人とか、むこうもあたしと一緒にいると不愉快な思いをするし、あたしはあたしでイライラするし。

―2丁目で20年もやってたことを、そのままテレビでやったらみんなびっくりしちゃったってことですね。
うさぎ:オカマキャラですよね。女だけど。

―すごい波乱万丈の人生ですけど、これからは?
うさぎ:それまで何かにハマって、それがモチベーションになって書いてきたから。
飽きて、いよいよ書くこと、欲しい物もないし、やりたいこともなくなってくると、急に不安になっちゃって。
「こんなんだったら、あたしもう、書き手としてもう終わりなんじゃないか?」とか不安になってきたところにもってきて、急に病気になっちゃって死にかけたりしたんで。

―結局ネタ切れの無い人生じゃないですか。
うさぎ:そうですね、まさか死にかけるとは思いませんでしたけど。

―車椅子が無くなるまでは待ちですね。治ったらこんなことやりたいな。とかありますか?全国のファンは期待していますけど。(笑)
うさぎ:ま、本当に当面の目標は、早く自分の足で歩けるようになりたい。っていうことなんで。歩けようになってからね、やりたいことは考えようと思います。

取材後記


後にも先にもこういう作家は出てこないと思う。
一般的なおしゃれエッセイストとは違う。そして勿論、ただアンダーグラウンドなだけのルポライターとも違う。

彼女の口にする思想や哲学は、それが歌舞伎町の話しであっても、二丁目の話しであっても、整形の話しであっても、セックスの話しであっても、文学的に聞こえた。
彼女の愛すべき隣人で、時に社会から否定的に扱われるような種類の人間達と彼女は、共に過ごすことを選んではいるが、全く異種のように感じた。

彼女は毎日酒を飲まないし、セックスもそんなに好きじゃなかった。
でも彼女は、派手に整形して二丁目と歌舞伎町で大騒ぎして、デリヘルで働き、ウリセンの男の子を買っていたと話してくれた。

純粋だから、愛に対して生真面目過ぎるし、物事に偏見が無さすぎる。
素敵な女性でした。

一日も早くご病気を治されて、ご活躍される日を心待ちにしています。

【インタビュー中村うさぎ 病気/プロフィール/同性愛編】を読む。

Interviewer Profile
彫昌(ほりしょう)
東京都豊島区池袋で彫師として活動中。
WARUMONの編集長として、数多くの著名人にインタビューを行っている。
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